企業DXとは目的ではなく課題解決手段!カルビーのDX背景と取り組み事例

社会の変化に伴い、働き方改革や新しい生活様式の常態化が進んでいます。このような「ニューノーマル時代」に欠かせないのが「DX(デジタルトランスフォーメーション)」です。DXとは「デジタル技術による生活やビジネスなどの社会変革」を意味し、ビジネス環境が激しく変化している今、DXの導入はさまざまな企業の優先事項であると言えます。

 

国内最大手のスナック菓子メーカーであるカルビーも、中期経営計画(2020年3月期~2024年3月期)の重点課題の一つとしてDXを掲げ、DX推進委員会を立ち上げました。この記事は、その背景や取り組みについて、同社の執行役員で情報システム本部 本部長の小室滋春さんにインタビューしてまとめたものです。

・中期経営計画にDXが盛り込まれた背景

カルビーの中期経営計画にDXが盛り込まれた背景について、小室さんは次のように説明してくれました。

「カルビーはおいしさと楽しさをお客様と一緒に作っていく中で、原料から消費者までの10プロセスを定義しています」

「この10プロセスの中で仕事をしていると、生産者の方や流通の方、お客様などとつながる好機があり、そこからデジタル・非デジタルに関わらずデータが生まれます。この中にお宝があると考え、それぞれのプロセスの中でデジタルを活用し、つながりの無限の可能性を追求するためにDXが盛り込まれました」

これらの単独のデータは、つながることで新たな価値や気づきが生まれると小室さんは考えました。そして、情報システム本部主導で、データをつなげて何ができるか、何が見えるかをまとめ、「カルビーデジタル年表」を作り上げたのです。

それぞれの商品について過去20年の売上データを軸とし、商品画像、卸店から小売店への出荷、商品通達、お客様の声、SNS、売場情報といったデータを集めて紐づけた、まさに「年表」と呼べるものを作成しました。さらに売上だけではなく、総合的に何が起きたかを簡単に把握できるようにし、最初に作成された3年前から、今でも新たなデータが追加され続けています。

小室さんは、デジタル年表の取り組みを始めて気づいたことがあります。それは、人によって年表の活用度合いがまちまちだということです。

「課題意識を持っている人は、仮説を確認するために頻繁にアクセスしますが、そうでない人もいます。教科書的な進め方だけでは実用には結びつかないのです」

このような背景から、カルビーはDX推進委員会を設立しました。事業部門(営業・生産・購買・マーケティング)のメンバーを中心とし、情報システム部は事務局の立場で事業の課題解決に徹することにしたのです。

そして、業務の課題を解決していくために、仮説を立て、データを集め、分析をするアプローチで進めようという方針を最初に打ち出しました。

「集めたデータから何ができるかを考えるのが「データ先行型」で、課題を解決するためにデータを集めるのが「目標具現型」と定義しました。どちらが良い悪いとは言えませんが、IT企業ではないカルビーは「目標具現型」を選択しました」

「困っていることの解決や、やりたいことの実現を目指す方が、初期投資も少なくて向いていると考えたのです」と小室さんは語ります。

・DX推進委員会での活動

続いて、DX推進委員会での具体的な活動や取り組みについての説明してもらいました。

小室さんによると、これまでのDX推進委員会での活動として、工場IoT(つながる工場)の取り組みやデジタルカルビーファンベースであるルビープログラム、需要予測、契約農家の方への栽培技術支援などに着手しているとのことです。

「すでにスタートしたものもあれば、まだ検証を繰り返している案件もあります。その中で、共通したキーワードとして「つながる」を持っています。カルビーは社内だけでDXを行うのではなく、社外と連携して「全てはお客様のため」に社外とつなげていこうと思っています」

 カルビーのDX推進委員会が目指しているのは、「生産者の方やお取引先、消費者の皆さま、それぞれが持っているデータのプラットフォームと、カルビーのプラットフォームをつなげてやりとりをしていくこと」だと小室さんは語ります。

「サプライチェーンで見れば、種子、圃場(畑)から何事も始まると考え、馬鈴薯契約農家の皆さんが品質の高い馬鈴薯を収穫、出荷できるために肥料や病虫害の情報、生育状況も衛星データやドローン画像を用いて分析しています。その上で、工場で商品に加工するときの歩留まり、品質の予測にまで一気通貫につなげられないかも検討しています」

さらに、「お客様との関係では、店頭で商品を手に取っていただくタイミング、ネット店舗にアクセスしてカートに入れていただく時点、実際に商品を食べていただく瞬間など、それぞれで接点があります。お一人おひとりのニーズに応えた商品、サービスについてデジタルで検証することを考えています」と続けてくれました。

・カルビーが求めるDX人材

カルビーはこれからのDX人材として、どのような人を求めているのでしょうか。カルビーが求めるDXを担う人材について、小室さんにお聞きしました。

「一言で言えばデータを活用し、既存ビジネスを進化させる社員です。社内にそういう人を増やすことがカルビーのDX人材育成だと考えます。巷でDXという言葉がありますが、スペシャルなことをするのではなく、私たちの事業や業務をデータを使ってもっと発展させるものなのだと思います」

つまり、DXは目的ではなく課題解決の手段であるということ、そして、データで何を生みだせるかイメージするにはセンスが必要である、と小室さんは答えます。

「データを見てピンとくる人を社内で育てていかなくちゃいけません。仮説をもって分析し、実証していくことの繰り返しです」

さらに、カルビーのデータを見て仮説を立てられるのは、社外ではなくカルビーの人しかいないと小室さんは続けます。

「データサイエンスの専門家である必要はありません。むしろ、カルビーのことを良くわかっていることが大切です。その上でデータも少し理解できれば良いのです。そういう社員を育ていきたいですね」

「社内のデータを見て仮説を立てられるのは、カルビーの人しかいないんです。社外にはいません。工場のデータを見て「想定より馬鈴薯の比重が高いからフライヤーの温度を調整しなければならない」と言えるのは社内の人しかいないでしょう」

「そういった経験や感覚を磨いていくのがカルビー流のDXであり、これからも、そのような宝を発掘できる人を増やしていきたいです」と語ってくれました。

・これからのカルビーのDX

最後に、これからのカルビーのDXについて、小室さんに展望や希望をお聞きしました。

「カルビーで取り組んでいるDXテーマは、面白いけどまだ数が少ないです。もうちょっと小さくてもいいから、ボコボコとお湯が沸騰する直前の状態のように「あれしたい!これしたい!」といろんな部署から声が出て、情報システムが「もう動けない!」というくらいになりたいです」と小室さんは語ります。

カルビーのDXへの期待と可能性に寄せる、小室さんの思いの強さがうかがえます。

「あちこちで、いろいろなことを始めて欲しいです。誰もがデータを少し使いこなして、業務を進化させていく。それが私の夢です。ちょっと偉そうに聞こえるかな(笑)」

「こちらの記事は、カルビー株式会社の承認のもと、「THE CALBEE (https://note.calbee.jp/)」のインタビュー記事「「つながるDX」~DXは目的ではない。課題解決の手段である~」をリライトしたものです。」