★このコラムは、Voicyをテキスト化し一部抜粋したものです。ご聴講はこちらをクリックください。
前回に引き続き、Tabjo(Tableau女性ユーザーコミュニティ)や、DATA Saber認定制度の立ち上げ、データ活用のエバンジェリストでTableauのパイオニアのKTさんにお話を伺っております。後半では製品のデモで工夫している点や、Tableauのコミュニティによる人材育成プログラム「DATA Saber認定制度」の立ち上げ秘話を伺います。
TableauにしろSnowflakeにしろ、良さを感じてもらうには製品そのものを見てもらうのが一番早いです。お客様に製品を体験してもらう最も手っ取り早い方法がデモンストレーションです。製品を初めて見てもらう場なので、欲しいと思ってもらえるようにグッと引き込まれるデモでないといけませんし、いかに強く印象づけるかという点が重要になります。したがってこの製品デモは、単に操作している画面を見せれば良いというわけではありません。製品デモというと単なる使い方手順書のように実施する方がいますが、それは魅力的な製品デモとは言えません。紹介する製品が自分のそばにあったら、今の自分はどう変わることができるんだろう?といかにイメージさせられるかが勝負です。新しい自分の姿にワクワクしてもらうために見せるのです。ですから、逐一すべての機能を説明する必要はなく、相手が今何をしていて、それがこの製品を使うことでどう変わるのかというストーリーを伝えなければなりません。
一方でそのように紹介できるレベルになるためには、まずは自分自身が操作を完璧に覚え、製品のエキスパートになる(努力をする)ことが大前提です。デモで使う機能の場合は、押し間違えたときに起こりそうなエラーも含めて把握しておくと安定したデモができます。もし何かが起こっても「こういう操作をしたら、こういうエラーが出ますが、その原因は、●●なので大丈夫ですよ!」と説明すれば相手に安心感を与えることができます。注意点は、操作をしている画面のどこに視点をおけばいいかわからない状態を長いこと作らないようにすることです。カーソルやグラフが登場するなど動く画面を見せて、見ている人がフォーカスする場所を合わせるようにします。あとは基本的に元気な声でハキハキと喋るのも基本ですがとても重要です。逆に突然小さな声を出して、意図的に集中させるシーンを作ることもできます。とはいえ、普段から元気な声でないと小さな声を出してもいつもと同じ音量になってしまいますので、まずは基本から抑えるべきかなと思います。
操作時の解説で気をつけておくといいことは、例えば画面上で「売上をドラッグアンドドロップして、列に置きましょう!」と言いがちですが、それは<やればわかる>ので私はわざわざ口に出しません。ただし、ハンズオンの場合は、話は別です。何をどこに置くという手順を、みんなで同時に行います。その場合は、丁寧に説明する必要があります。ハンズオンとデモの説明は、分けて考えることが大事です。デモの説明は、ストーリーが重要です。売り上げをドラッグアンドドロップして見せるシーンでは、「売上が10億円ありますが、カテゴリごとの売り上げを見ましょう!」と言います。誤って説明する例として、「カテゴリをドラッグアンドドロップします!」と言ってしまう事です。この<ドラッグアンドドロップ>が邪魔な言葉になってしまうのです。見て分かるものを説明する必要はなく、不要な言葉はなるべく排除し、ストーリーにフォーカスすることが重要です。その次に、音声や動きに抑揚をつける。さらに余裕が出てくれば、相手に質問する。これがデモのコツです。
見てくれたみんなが元気になる発信をすることを心がけています。SNSの発信に限らず、Tabjoなどのコミュニティ活動などにも繋がっています。私の元気をもらったみんなが元気になったら、みんなが活躍します。そんなみんなを見て私ももっと元気になります。元気と成功は連鎖していくのです。
初めてTableauと出会った時に直感的にすごいものだと思いました。ただ、当時私が言語化できたTableauのすごさは、1つは見た目が綺麗とか、可愛いということくらいでした。こんなに可愛くて楽しげなビジネスソフトウェア製品が世の中に存在していることに驚きました。見たことのないコンシューマーゲームのリリース時のような興奮です。私の感じた美しさや面白さは素晴らしいものだったので、誰もがそれに賛同してくれると思っていました。ところが、実際はお客様にデモして見せてもまったくウケなかったのです。私が行ったのは、ありきたりでどんなツールでも作れそうな棒グラフと線グラフではなく、目新しい綺麗で可愛いバブルチャートをひたすら作って見せるようなことでした。しかしお客様の反応は薄かった…。昔の私の失敗談です。お客様は趣味で綺麗で可愛いものを選ぶかもしれませんが、仕事では役に立つものを選ぶに決まっています。しかし、私が直感的に感じていた<綺麗>と<可愛い>は間違ってはいませんでした。綺麗というのは「見えやすい」ということです。だからこそ大量データのその向こうの世界で何が起こっているか理解できるのです。しかし、Tableau初心者だった私は、それを言葉にすることができませんでした。「なぜ素敵なのか?」言葉にして他人に説明できるようになるのには、時間をかけて学び、実践することが不可欠なのです。
Tableauの素晴らしさはミッション「We help people see and understand data. 」という言葉※に集約されていました。人がデータを見て理解できるようにするために、脳の仕組みから「見やすさ」を考え、人の視界に入ってくるものを「Preattentive Attributes」という視覚属性に分類してすべてのチャートを再構成しています。人の自然な認知方法を活用しながら、ビジュアル分析という方法で人がデータを理解できるようにし、アクションを促していくのです。
すべてのビジュアルが基礎的な視覚属性に分類されるということは、言い方を変えればすべてのビジュアルはそれらの組み合わせによって成立しているということです。その結果「Tableauの表現力は無限でなければならない」という信念のもと、データを使って色々な会話をしていかなければならない今、Tableauは、新しい言語を作ろうとしていると表現していました。こうした信念に突き動かされ、多くの人がそれらを作り上げる努力や、研究、また伝えることを行ってきました。Tableauのコミュニティに所属している人は、世界を変える素晴らしいツールに魅せられてしまった人達なのです。合唱と一緒で、指揮する人がいて、みんなで歌い、様々な楽器を演奏し、まるでオーケストラの様にひとつの楽曲をみんなで作り上げるイメージです。製品を作る人も、伝える人も、使う人も、みんな同じ思いを持っているという点が、Tableauの一番の魅力だと思います。
※https://www.tableau.com/about/mission
DATA Saber認定制度というTableauコミュニティメンバーが定める認定制度があります。元々は私がTableau社員だったころに2年と5ヶ月かけて105名のTableauスキルとデータドリブン文化醸成のために必要な考え方を叩き込んだプログラムが元になっていましたが、その後認定制度としてリリースし、卒業生が共にデータドリブンを広めるための仲間作りのために誰でも使えるようにしました。現在は育てた弟子が弟子を育て、さらにその弟子が弟子を育てるという強力なネットワークコミュニティとなり、400名を超えるDATA Saberがいます。みんなで切磋琢磨しながら、技術を学んだり、事例を紹介したり、 データドリブンとは何か、ということを一生懸命考えるコミュニティです。
DATA Saberプログラムに参加すると、Tableauの操作を基本から上級まで学べます。更に、Tableauを通して社内や社外のコミュニティへの参画や、技術者としての活動も問われます。技術面においては、単なる操作方法だけでなくビジュアル分析の考え方や、デザイン性や、ストーリー性を、人を動かすインパクトを持たせながら伝えることも学びます。そういった点を修業する、大変な3カ月のプログラムになっています。3カ月のプログラム中は、師匠と弟子との関係で成り立ちます。合格基準はありますが、プログラムの合否は全て師匠に任せています。合格するまでの道のりは大変ですが、師匠と弟子の結束が強くなり、その後のネットワークも広がります。3ヶ月の試練は厳しいですが、弟子は卒業した瞬間に、師匠やともに過ごした仲間たちへの感謝をおぼえ、データドリブン文化の広め役としてやっとスタートラインに立てたという実感が湧く様です。
詳しくは、こちらをご覧ください。
https://datasaber.world/
DATA Saberプログラムで伝えたことをまとめた本を、現在執筆中です。書き出す前に哲人と青年の対話形式で進む「嫌われる勇気」という本を読んでものすごく感動しました。DATA Saberプログラムも師匠の弟子の関係性という点で、通じるものがあったため「対話形式で本を出版したい」と出版社の人に相談しましたが、最初は対話形式は難しいと返されました。それでも想いが募り対話形式で提出したところ、面白かったので「こちらで行きましょう!」という事になりました。今現在、ビジュアル分析の部分を書いています。なぜ人がビジュアルを使わなければならないのか、マスターとアプレンティス(弟子)の会話で進んでいくのですが、マスターは自分自身であり、時に私の師匠たちでもあります。弟子も私のかつて卒業して羽ばたいた弟子たちでもあり、私の愛弟子たちの弟子たちでもあり、時には師について学んでいたかつての私自身でもあります。この7年間くらいを思いながら、感慨深い気持ちで書いています。
2021年の夏には出版されると思いますので、どうぞ続報をお待ちください!