開示要請の高まりと企業価値向上に資するESGマネジメント
~財務・非財務のデータ統合、サイロ化された業務・組織・データの壁をDXで乗り越える~

2022年1月27日、アバントグループ3社(株式会社アバント、株式会社ジール、 株式会社ディーバ)の共催で、『開示要請の高まりと企業価値向上に資するESGマネジメント~財務・非財務のデータ統合、サイロ化された業務・組織・データの壁をDXで乗り越える~』が開催されました。
このセミナーは三部構成になっており、本記事では第一部をレポートします。
昨今、ESG情報の開示に対する要請は高まりをみせています。
2022年4月からは、東証プライム市場において※TCFDに基づいた開示が必須になるなど、※温室効果ガス(GHG)に始まり、※ESG情報を適切に開示していくことが、今後全ての企業に求められるようになってくると考えられます。
このような状況に対して、アバントグループでは、非財務情報マネジメントと開示要請対応についてソリューションを通じて経営支援をしていきます。
※TCFD:Task Force on Climate-related Financial Disclosures (気候関連財務情報開示タスクフォース)の略称で、金融安定理事会(FSB)によって、設置された企業の気候変動への取組みや影響に関する財務情報についての開示のための枠組みです。
※温室効果ガス(GHG [greenhouse gas]): 水蒸気、二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素、フロンなどの温室効果をもたらす気体で、京都議定書における排出量削減対象となっています。
※ESG:E(Environment:環境)、S(Social:社会)、G(Governance:ガバナンス)の頭文字を合わせた言葉で、この3つ観点から投資していくことが求められています。
――登壇者――
株式会社アバント
イノベーティブソリューション事業部 DXソリューショングループ
英国CMI認定サステナビリティ(CSR)プラクティショナー 田中 義人氏
投資家は、投資判断において非財務情報を重視するようになってきています。その傾向は、2000年以降ますます顕著になってきており、今や非財務情報が企業価値を決める時代に移行してきました。非財務情報の開示について、世界各地の状況を説明すると次のようになります。EUでは、会計と同じく外部監査人による非財務情報の検証が義務化されました。USでは、上場企業に対して人的資本の情報開示が義務付けられました。日本では、※コーポレートガバナンスコードが改定され、TCFDへの対応が追加されています。世界的な会計基準では、TCFDの枠組みを使って気候変動以外の非財務全般に拡張する見込みとなっています。つまり「非財務開示情報の正確な収集」及び目標・ KPI に対する「 PDCA 管理 」が重要になってきていると言えます。
コーポレートガバナンスコードですが、2021 年 6 月に改訂版が公表されました。これには、企業はサステナビリティ( ESG 要素を含む中長期的な持続可能性)が重要な経営課題であり、この課題への積極的・能動的な対応が求められます。特に東証プライム市場上場会社には、高水準のサステナビリティ情報の開示、ガバナンス 対応が求められています。
※コーポレートガバナンスコード:金融庁及び東京証券取引所が共同で策定した上場企業が行う企業統治(コーポレートガバナンス)のガイドライン(原則・指針)です。
ESGマネジメントに対して、お客様の課題をお伺いしたところ、大体この四つに集約されます。
・財務・非財務を統合した戦略・計画への組込(社会的意思決定ができる仕組みづくりが必要となる)
・データ管理が手作業、人海戦術
・乱立する外部評価機関への対応に追われている。本質的には非財務でよい評価を得たい
・各テーマへの経営投資がいかに企業価値に影響があるのかを適切に把握したいと考えている
上記の課題に対して、アバントグループとしては、ESGマネジメントの全体像を以下の九つのプロセスに整理しました。
まず、どんな法規制があるのか、どんなガイドラインがあるのか、サステナビリティに関する情報を調査します。その上で、自社に対して重要な課題は何かを考え、マテリアリティを特定し、KPIを設定します。具体的に情報を取り込み、ESGの経営を策定します。その後、計画を実行し、モニタリングしていきます。第三者保証にデータの信頼性を確かめてもらい、足りない点の改善点を見つけながら、社内で承認を行い、外部に開示していく、というステップになります。
ESGに関する投資家のニーズと開示の現状についてご説明します。
マテリアリティ(重要課題)には二つの視点があります。それは、投資家視点のマテリアリティとマルチステークホルダー視点のマテリアリティです。
・投資家視点のマテリアリティ
IIRC(国際統合報告評議会)が定義しているマテリアリティ。環境・社会課題が企業の価値総合能力に重要な影響を与える課題。
※IIRC(国際統合報告評議会)とは、企業の財務情報だけでなく、環境保全や地域貢献などの非財務情報もまとめた情報公開のフレームワーク「統合報告(Integrated reporting)」の開発・促進を行っている団体。世界23か国の有力企業約90社が参加している。
・マルチステークホルダー視点のマテリアリティ
GRI(Global Reporting Initiative)が定義しているマテリアリティ。企業が経済、環境、社会に著しい影響を与える項目やステークホルダーの評価や意志決定に対して実質的な影響を及ぼす項目。
※GRI(Global Reporting Initiative)とは、サステナビリティに関する国際基準と情報公開の枠組みを策定することを目的とした、国際的な非営利団体である。
機関投資家のニーズ
機関投資家は、 投資家視点の個社独自のマテアリティの特定と開示を通じて、将来リターンの確実性を判断しようとしています。
会社のビジネスモデルが何で、価値をどのように作っていて、どのように競争優位性を担保していくか、という課題を開示して欲しいと投資家は考えています。このような具体的な企業の課題を開示してしまうと、競合他社にも情報を公開されてしまいますので、難しい側面もありますが可能な限り自社の特有のマテリアリティを開示して欲しいと考えています。これによって、投資家は企業価値を評価したいと考えています。
上図は、非財務投資に対して投資家がどのように考えているかを整理した図になります。IIRCが定義する6つの資本のうち、知的資本、人的資本、自然資本、社会的資本(上記図の青い項目)という4つの資本は、いずれも非財務資本で、ここに費用をかけていくことによって企業価値向上につながっていくことがわかります。例えば、R&Dや人件費を上げる、教育に費用をかける、ということは短期的にはコストがかかるという側面もありますが、長期的には競争優位性や稼ぐ力につながっていきます。もう少し長期の視点で見ると、このような非財務への投資が稼ぐ力を、また持続的な企業価値の創造につながります。そうすると投資家に対して中長期的なリターンが得られるということがわかります。企業の場合は、例えば工場の増資や製造資本への投資など、すぐに利益を生み出す投資に走りがちですが、投資家の視点では、もう少し長期の視点で投資を判断しているという内容になります。
企業価値評価の指標として※PBRがありますが、1倍以上の企業が、企業価値として簿価以上の評価を得られているというものになります。これが1以上になるためには、※エクイティ・スプレッドがプラスでないといけません。エクイティ・スプレッドがプラスであるためには、※ROE引く株主資本コストがプラスでなければいけません。では、この稼ぎを示すROEはどのように上げていくべきかというと、ESGの機会への取り組みによって、中長期的なリターンが向上します。このESGの機会への取り組みというのは、例えば※CSV(共通価値の創造)や※LTV(長期的な価値の向上)が、将来的にはROEを上げていくと認識しています。もう一つは、ESGのリスクを下げるということがあります。これは株主資本コストにかかわりますが、例えば、環境に対しての負荷が増しているという事であれば、ESGリスクへの対応が足りないということになりますので、そういうところを見込んで評価していく必要があります。
※PBR(Price Book-value Ratio):一株あたり純資産に対する株価の倍率で、企業の資産面から株価の状態を判断する指標。
※エクイティ・スプレッド(Equity-Spread):投資家から見た価値創造企業であるか同課の指標
※ROE(Return On Equity)自己資本利益率:企業の自己資本(株主資本)に対する当期純利益の割合
※CSV(Creating Shared Value):社会的な課題を解決することで創出される「社会価値」と「経済価値」を両立させる経営戦略
※LTV(Long Term Value):長期的にビジネスを維持すること
投資家のニーズとしては以下のようなものがあります。
・投資家視点のESGマテリアリティ―の開示
・ESGマテリアリティと中長期的なリターン向上の関係性の説明
・ESGマテリアリティとROEの関係性の説明
企業の課題としては以下のようなものがあります。
・ESGマテリアリティと企業価値の関係性
これらに対して、弊社の考えるアプローチとしては、ESGのKPIとROEやBPRという指標に相関分析を使って説明を補強、さらには、マテリアリティの特定に使えるのではないかと考えています。
例えば、非財務のKPIとして研究開発費、人件費、女性管理職比率、従業員のモチベーションを示す従業員満足度とROE、※ROIC、PBRなどの関係を分析すると、どこに効きそうかということがわかってきますので、それをマテリアリティの重み付けとして使って開示していくことで投資家に対して説得力のあるマテリアリティになるのではないかと考えています。
※ROIC(Return On Invested Capital)投下資本利益率:企業が事業活動のために投じた資金を使って、どれだけ利益を生み出したかを示す指標。
最後に弊社グループのESGソリューションをご説明します。
1、まずはマテリアリティ―を特定して戦略を作っていく構想策定の支援として、アドバイザリーコンサルティングを実施しています。
2、各KPIの作成およびモニタリングの情報基盤としてDiva System FBXを非財務の連結のシステムとして活用し、ESGデータマネジメントを支援します。
これは第二部でご紹介します。
3、経営者にモニタリングした結果をすぐに見せて、このKPIは達成できそうかどうかの進捗をESG Dashboard という形で提供します。
これは、第三部でご紹介します。
今、企業の非財務情報開示は、大変注目を集めています。世界的な情勢を見ながら、投資家に対する期待にも答えていかなければなりません。
本セミナーでは、企業の情報の大衆化をミッションに掲げるアバントグループが、以前より取り組んでいるソリューションを結集したソリューションのご紹介です。
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