人事部への問い合わせ対応に
自社で開発したチャットボットで
抜本的な業務最適化

(写真右から)
株式会社ジール人事部 部長 長谷川 真津里
SIサービス第一本部 SI第一事業部 シニアコンサルタント 山口 亜矢子
SIサービス第一本部 SI第一事業部 アソシエイト 岩田 夏夢郎
※部署名・役職名は取材当時のものとなります
(写真右から)
株式会社ジール人事部 部長 長谷川 真津里
SIサービス第一本部 SI第一事業部 シニアコンサルタント 山口 亜矢子
SIサービス第一本部 SI第一事業部 アソシエイト 岩田 夏夢郎
※部署名・役職名は取材当時のものとなります
人事や総務のような管理部門には、従業員からさまざまな問い合わせが寄せられる。しかし、共通した問い合わせも多い。BI/DWHコンサルティングやインテグレーション事業を展開する株式会社ジールでは、人事部に来る問い合わせに自動で回答するチャットボット「ジンボット君」を自社で開発し、問い合わせ対応の大幅な負荷削減を実現。本格的な開発を開始してから、わずか3週間で稼働させた「ジンボット君」が開発された背景とその効果について話を聞いた。
―「ジンボット君」を開発したいというのは人事部の長谷川さんからの発案だったと伺いました。どんなことが背景にあったのでしょうか。
長谷川: 人事部に寄せられるメールでの問い合わせへの対応を効率化できないかと考えたのが始まりでした。問い合わせの領域は勤怠から証明書、採用、育成まで幅広く、対応するための情報が分散しているために、回答するのに手間と時間がかかっていました。
1日に5~6件の問い合わせに5名で対応していたのですが、メンバーそれぞれが別の業務を抱えていたため、問い合わせ対応は想定外の業務量になってしまいます。当社はBI/DWHを扱うビジネスをしている企業ですから、ベースとなるITでこの問題を解決できないかと考え、チャットボットで自動化するという結論に至りました。
―なぜチャットボットだったのでしょうか。
長谷川: 一般のQ&Aサイトでは、わざわざアクセスしてQ&Aを読んでいく必要があって、使いづらい気がしていました。実際に利用する社員目線で、手軽さや使いやすさを考えるとチャットボットが適していると思いました。
そうした中で、当社のSIサービス第一本部 第一事業部がチャットボットの案件を手がけたことがあると聞き、事業部長にできるかどうか打診したところ「できますよ」と即答してくれて、早速依頼することになりました。
山口: 始まりは突然でした。上司である事業部長から話が下りてきたのですが、実はチャットボットを作った経験はありませんでした。話が出る半年ほど前にあるお客様から打診があって、デモを作って事業部長と一緒に提案したことがあっただけでした。
その後、資料を掘り返して思い出してから、長谷川さんのところに詳しい話を聞きに行きました。2019年6月の頃だったと思います。
―ちょっとドキドキものですね。
山口: ドキドキというよりワクワクしました。新しいことに挑戦するのは新鮮ですし、自分の勉強にもなります。
Office365を導入し、ちょうどグループチャットツールの「Microsoft Teams」も使い出した頃だったので、当社でも構築経験と実績が豊富なMicrosoft Azure上でチャットボットを構築して、Microsoft Teamsに組み込んで使う方法を提案したのです。
Microsoft Azureに精通している他部署のメンバーに環境を用意してもらい、マイクロソフトが提供しているチャットボットを作成する「QnA Maker」の標準機能を使い、API連携をさせることで、すぐに一問一答式のデモを作ってお見せしました。
長谷川: 質問を入れると答えが返ってくるので、単順に「面白い」というのが第一印象でした。みんなが毎日使っているMicrosoft Teamsに載せられるというのも気に入りました。改めて別のサイトにアクセスする必要もありませんし、普段のコミュニケーションをとるように、場所を選ばすに利用することができます。これなら社員が気軽に利用できると思いましたね。
―そこから本格的な開発がスタートしたのでしょうか。
山口: 最初は空いた時間に少しずつ進めていたのですが、本格的に始まったのは、岩田さんがメンバーに加わった2019年8月頃からです。チャットボットに興味があると耳にしたので「一緒にやろうよ」と声をかけました。
岩田: もともと日常業務を効率化するようなアプリを開発することに興味がありました。山口さんとは席が近くて、チャットボットのプロジェクトが進行しているのを知っていたので、ぜひ関わりたいと思っていました。入社して1年目ということもあって、とにかくいろいろ経験したいというのもありました。
Microsoft Azureのツールを使うのは初めてだったので、どんなWebサービスがあるのかを調べていくと同時に、ドキュメント資料などを参考にQnA Makerによるチャットボットの作り方を学んでいきました。
大変だったのは、長谷川さんからQ&Aの回答で「複数の選択肢を提示できないか」という要望が上がってきたことです。議事録にも記録が残っています(笑)。
―難しいお題が出てきたわけですね。
岡部:データドリブン経営では、データを活用できる社員の育成が必要です。米国企業には、データ活用の促進や教育を担うBIマネージャーが存在します。日本企業でもDX部門にBI担当者を置いて同様の取り組みを行う動きが出てきています。BI活用の拡大に伴い、課題となるのが同時実行性能です。既存のDWHはパフォーマンスが限られており、同時接続数の増加に伴い、レスポンスの低下や他システムへの影響が懸念されます。Snowflakeなら、パフォーマンスを気にすることなく、BIツールの活用を広げることができるので、データを基本とした成長戦略を実現しやすくなります。
長谷川: 改めて利用者目線で考えると、「一問一答形式では幅広い問い合わせに対応するのは難しい」と思うようになったのです。実際、メールでも何回かやりとりして、本当に求められていることがわかることも多いです。
チャットボットでも「知りたいのはAですか? Bですか?」といった選択肢を示すことができれば使い勝手が良くなるはずです。例えば「休暇」というキーワードが入っている質問に対して、「有休」「代休」というキーワードが入った選択肢を自動で提示するような仕組みがよいと考えました。
岩田: その要望を聞いてQnA Makerの機能を詳しく調べてみると、標準機能の一問一答形式以外に、複数の回答を選択肢としてMicrosoft Teams上に提示する機能があることが分かりました。
QnA Makerは形態素解析を用いて、ユーザの質問とのマッチング率を、すべての回答に対して算出します。標準機能ではここから最もマッチング率の高い回答を1つだけを返答するのですが、コードを修正することで、返答する回答の数を変更できることが分かりました。
そこで、マッチング率上位3つまでの回答を選択肢として提示する機能を提案しました。
また、選択肢を示すにあたっては、双方向性を意識して2種類のアプローチを実装しました。形態素解析によって複数の候補を自動で提示する方法だけでなく、選択肢が決まっている場合には、あらかじめ定められた選択肢を提示する方法を加えました。例えば、会社内の「座席表」に関する問い合わせに対しては、現在3カ所ある当社のオフィスを選択肢として提示し、使いやすいように工夫を凝らしています。
―そこからは順調に進んだのでしょうか。
山口: 苦労した点はいくつかありました。システムができ上がったタイミングで、当社の自部門内に公開して、非公式でメンバーに協力してもらってテストを行いました。その結果、欲しい回答が見つからないケースが多く出てきてしまったのです。
そこで、「ジンボット君」をより高い精度に作り上げる目的で、2019年9月くらいに想定していたカットオーバーを1カ月ほど延長し、Q&Aをさらに追加し充実化していきました。
長谷川: 質問と回答のログを見せてもらって、ないものを洗い出して増やしていきました。当初100ほど用意したQ&Aの数を、最終的には200くらい増やしたところで本番稼働に踏み切りました。2019年10月の初めぐらいのことです。
―実際に活用してみてどうだったのでしょうか。
長谷川: 人事部としては問い合わせ対応業務が大変楽になりました。問い合わせメールはかなり減りましたし、「ジンボット君」で参照URLやPDFでの書類の提示することもできるので、その後の事務処理も効率化されています。社員から申請書類を受け取る際にもやりとりがスムーズになりました。今でも質問と回答のログをチェックして足りないものについては追加しています。
山口: 1カ月ほど本稼働が延びましたが、その間にブラッシュアップできたことが大きかったと思います。社内案件だからこそ融通が効いたのもありますが、結果的にとても良いものになりましたし、私たちも勉強してノウハウを多く蓄積できました。
このプロジェクトは、岩田さんをはじめとした若手の努力があって成し遂げられたと思います。キャラクターアイコンも岩田さんの同期のメンバーの手作りです。ワイワイしたノリで楽しく進めることができました。また、Microsoft Azureに強い部署との連携など、当社の得意分野を組み合わせて、スピーディに進められたのも大きな成果です。
―実際に活用してみてどうだったのでしょうか。
長谷川: 人事部としては問い合わせ対応業務が大変楽になりました。問い合わせメールはかなり減りましたし、「ジンボット君」で参照URLやPDFでの書類の提示することもできるので、その後の事務処理も効率化されています。社員から申請書類を受け取る際にもやりとりがスムーズになりました。今でも質問と回答のログをチェックして足りないものについては追加しています。
山口: 1カ月ほど本稼働が延びましたが、その間にブラッシュアップできたことが大きかったと思います。社内案件だからこそ融通が効いたのもありますが、結果的にとても良いものになりましたし、私たちも勉強してノウハウを多く蓄積できました。
このプロジェクトは、岩田さんをはじめとした若手の努力があって成し遂げられたと思います。キャラクターアイコンも岩田さんの同期のメンバーの手作りです。ワイワイしたノリで楽しく進めることができました。また、Microsoft Azureに強い部署との連携など、当社の得意分野を組み合わせて、スピーディに進められたのも大きな成果です。
―組織として動く以上に人と人の結びつきが強いですね。
山口: 自由な社風だからこそできたのだと思います。みんなが自主的に動いてくれるんです。Microsoft Teamsでコミュニケーションがとりやすいというのもあって、多くの人の協力が得られました。
―今後についてはどんな展開をお考えですか。
山口: さらにチャットボットの機能を拡充していきます。別の部署で会議予約システムの開発を計画しているのですが、そこでは「ジンボット君」との連携も検討しています。また人事での活用のみならず、「ジンボット君」の特性を生かして、総務や経理の問い合わせ対応にも応用できるのではないでしょうか。将来的にはRPAとの連動やAIの活用も視野に入れていくつもりです。
さらに、グループ会社に対しての提案は行っていますが、製品として外販することはさらに先になると考えています。一方で、当社の強みであるMicrosoft Azureを活用したデータ基盤の構築や、データ活用における豊富なノウハウをもとに、今回のチャットボット開発への取り組みが、お客様のビジネスの裾野をさらに広げていけるのではないかと考えています。